レシピと楽譜

宮下奈都さんの『羊と鋼の森』
は、ピアノの調律師を目指す青年の話で、
料理の事は出てこないのだけど、
『最高の音を探る』というのが、
『最高の味を探す』というのに通じるような
部分があって、非常に心に残る1冊でした。
  本.png
私が仕事でレシピを作り、
フードコーディネーターさんや、
調理人さんが再現するということがあります。
当たり前ですが、
作る人によって、味も焼き加減も変わってきます。
生徒さんの中には、
「気に入って何度も作っているうちに、お教室での味と
違う味になってきてしまった」
と話される方もいます。
美味しいという味覚も、その幅も、流動的なので、
『絶対という味』は、『絶対という音』と同じくらい、
とても不安定なものなのだと思います。
そして、レシピは楽譜と同じように、
上手に再現する事だけが目的ではなく、
自由に表現し、自由に楽しんで良いものなのだと、
この本を読んで、改めてそんな事を感じました。
自分のレシピが、どこかの食卓で、その風景に合わせて
小さな幸せを奏でてくれていたらいいなと思います。